青木 宏

作家や作品の魅力をさらにご紹介する企画「Artist Interview」。
第34回は現在、企画展「salute 01 – DAYDREAM」にご参加くださっている青木宏さんです。弊廊では初展示となる青木さんに、やきものを始めたきっかけや作品についてなど、興味深いお話がたくさん伺えました。ぜひご一読ください。

ー ご出身は山口県で、現在は愛知県常滑市で工房を構えて制作されていますが、それまで色んな土地に行かれたそうですね。

青木さん(以下敬称略)「そうですね、実はやきものを始めたのは沖縄なんです。元々沖縄の文化や自然に憧れがあって大学卒業後に移り住みました。ダイビングしたりして過ごしてたんですがそのうちお金が尽きて、どうしようかなって思ってた時にたまたま陶工募集の張り紙が目に入って、面白そうだなと思って飛び込んだのがきっかけです。初めの頃はシーサーを毎日作ってました(笑)」

ー そうだったんですね!

青木「やきものを知っていくと、産地によって土や技法、焼き方など色んな特色があって、知る度にどんどん気になるものが増えていくんです。どうせなら現地に行って直接学びたいと思って、そこから思い出せるだけでも沖縄、備前、瀬戸、越前、美濃などなど・・・気付いたら様々な土地を転々としていました。今の常滑に落ち着いてからは5~6年になります。」

ー この地に落ち着いてくれて嬉しいです(笑)

ー 作品についてお聞かせください。土は常滑の土を使っているんですか?

青木「愛知県の粘土業者さんに依頼して、自分好みに色んな土を混ぜて合わせて作ってもらってます。
作品の作り方としては、作品本体の上に別の土を重ねて素焼きをし、そこに釉薬をかけて本焼きします。焼き上がったらワイヤーブラシやサンドペーパーなどで釉薬を剥がしていきます。剥がして洗って乾かすという工程を、しっくりくるまで何度も繰り返します。剥がしていくと釉薬に守られて熱が当たっていない地肌が出てくるんですね。釉薬は熱から守るのと同時に、釉薬自体が土に作用して様々なテクスチャーに変わっていて表現の面白さも生み出してくれるんです。
作品本体の土・重ねた土・釉薬の3つが作用しあって複雑な表情を作っています。」

ー この技法で作り始めたのはいつ頃からなんですか?

青木「20代半ばからやきものを始めてだいぶ経つんですが、元々古いものが好きで、よく“経年劣化”と言われたりしますが僕としては“経年変化”だと思っていて。そういう、ものが朽ちていく様子も美しいと感じていて、経年変化を作品として自分で作り出したいという想いから色んな実験を何十年も積み重ねていく中で生まれた表現ですね。」

ー 「本焼きの後に釉薬を剥がす」というのはあまり聞いたことがないですが、模索し色んな発見をしていきながら生まれたものなんですね。

青木「釉薬もいわゆるガラス質の釉薬ではなく、剥がすための釉薬を自分で作っているんです。なので表面はツルツルじゃないんですよ。化粧がけと釉薬の合いの子のようなイメージですかね。完全に溶けないとそれはそれで作品に作用してくれないので、その塩梅を長年かけて生み出して今に至っています。」

ー ろくろを使わず全て手捻りで作られているというのも特徴ですね。

青木「ろくろを使って器などを作っていた時期ももちろんあるんですが、あっという間に出来上がってしまうんですね。僕はもっと土と対話しながらゆっくり作っていきたいんだなと、やきものをやっていくうちに気が付いて。
ろくろだと早すぎて僕が気持ちを伝える前に作品が出来上がっちゃうので(笑)手捻りだと本当に1ヶ月とか2ヶ月とかかけてゆっくり話しながらできるので、こういう作り方の方が自分に合ってるなと思います。」

ー シンプルだけど色んな形に見えて揺らぎのある面白いフォルムですが、あえて余計なものを削ぎ落としているんでしょうか。

青木「自分自身の好みもありますが、なるべくシンプルにしたいなという気持ちは常にありますね。何かをモデルにして作っていることはないんです。「土の種子」というタイトルを付けていますが、実際の種子を見ながら作っているわけではなくて、僕の今までの経験など蓄積されたものが溢れて自然と作品となって出ているのかなと。
何かを参考にしながら作るとそれに寄せようとして表現が窮屈になってしまう感じがして。なので大きさも特に決めないんです。そうすることで伸びやかに作れる気がしていて、自分で見ててもどんな物ができてくるかなって思いながら作るのが楽しみなんです。
きっと僕自身が楽しんでなければ良いものってできないんじゃないかなとずっと思っているので「こうあるべき」というものは、なるべく作らないようにしています。僕は粘土が好きなので粘土で作りたい。ただそれだけですね。」

ー 全ての作品に「土の種子」というタイトルが付いているんですね。

青木「このタイトルには僕が凄く好きな話が由来していて。
大賀蓮(おおがはす)という花があるんですが、2000年以上前の遺跡から発掘された蓮の種を育てたら花が咲いたっていう話で、大賀博士という方が発芽させたことから「大賀蓮」と名付けられたんです。この話を聞いた時に、もしかしたらその蓮は地上に出てこれなかったかもしれないのに、生命力を内包させたままずっと静かに待ってたんだなぁて思って、僕が作りたいものってこういうことなのかなって感じたんです。じっとそこにいて静かだけど生命力が内包されているような、そんなものを作りたいって。そのストーリーと自分の作品がリンクして、それ以来「土の種子」というタイトルを使っています。
作品もひとつの生き物みたいに作っているし、作品にもそのように存在してほしいと思っています。」

ー 今回企画展「salute 01 – DAYDREAM」で弊廊にて初展示いただき、素材も全く異なる別ジャンルの方と組み合わせた展示もあまりご経験がないかも知れませんが、展示してみての感想などあればお聞かせください。

青木「確かに普段は個展や工芸の方との展示が多いので、違うジャンルの方と同じ空間にあるのは不思議な感じですね、でも新しいしワクワクする感覚もあります。素材だけでなくそれぞれの作家さんが好きなものや考え方も違っているけど、そのことが自分にとっては心地いいです。お互いの違いが共存することで、この展示がとても良い空間になっているような気がしますね。」

青木さんがご参加くださっている企画展「salute 01 – DAYDREAM」は2月15日[日]まで開催しています。三者三様の表現によるどこか不思議で心地良い空間に、ぜひお越しください。

インタビュー:尾関陽子 / 写真:木村宗一郎 /編集:榮菜未子

青木 宏  / Hiroshi Aoki

1976年 山口県周南市生まれ。
作品をつくる時、私は土や炎と対話をしながら、実は自分自身と対話をしているのだといつも感じています。私にとって作品とは、積み重なっていく対話と時間の痕跡です。 私は作品をつくる時、あえて時間のかかる工程でつくります。その過程で作品には私の時間が刻まれていくと信じているからです。具体的には、ろくろは使わずに手びねりで時間をかけてつくる。作品に種類の違う土を重ねる。釉薬をかけ本焼成をした後に、その釉薬をまた剥がすなどします。本焼成をした釉薬の下には、直接の熱に触れていない地肌があります。そして、その地肌の一部は釉薬と反応して重なる土同士が焼き付いています。釉薬を少しずつ剥がしながら、それらの複雑な地肌を露出させていきます。 それらの時間のかかる工程の中で、物が経年変化していくように、私の時間が作品に刻まれていくのだと信じています。時間を表現すること、それは実際に時間をかけることでしか生まれないのだと思います。


salute 01 – DAYDREAM
SHOTO KOHAGURA / 青木 宏 / 金子 葵
2026年1月31日[土] – 2026年2月15日[日]

JILL D’ART GALLERY

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