山田 雅哉 さん

作家や作品の魅力をさらにご紹介する企画「Artist Interview」。
今回は少し趣を変えて、現在開催中の企画展「Breeze / 薫風」にご参加くださっている、山田 雅哉さんのアトリエをご訪問。緑あふれる素敵な空間で、リラックスしながらのインタビューとなりました!是非ご一読ください。

インタビュアー榮:素敵なアトリエにお招きいただきありがとうございます!
さて、今回ジルダールでの初展示となりますが、特に意識された点などありましたら教えてください。また、お気に入りの作品はありますか? 

山田さん:ジルダールさんはグループ展でもきちんとコンセプトがあり、意図がとても伝わる内容でしたので、自分の軸はしっかり持ちつつタイトルの「薫風」にふさわしい爽やかなイメージに合わせられたらと思いました。搬入の際に他の作家さんの作品と並べてみて、調和が取れた作品になったんじゃないかなと思います。お気に入りは一番大きい作品(ページ上部に掲載の写真・右側)ですね。これは今回のために頑張って描きました。

榮:とても素敵な空間になって、爽やかな風が吹いてました!

見えない“音楽”をかたちにする

榮:山田さんの作品タイトルは「piece of music ○○番」といった感じで、どこか記号的につけられているような印象を受けますが、どのように付けられているんでしょうか?

山田さん:「piece of music」というシリーズは学生時代から自分の中でずっと続いているテーマです。毎日作品を制作していて、生きることがそのまま作品を作ることに繋がっているので、本当は日付けとかでも良いんですけど。あとはあまりタイトルを付けるのが得意ではないというのもありますが(笑)

榮:なるほど、日記を綴っているような感じですかね。
6年前に愛知県立芸術大学大学院の博士課程で書かれた論文のテーマ「音楽の視覚化に見る日本画表現の可能性」というのも、音楽にまつわる興味深いタイトルですが、こちらについてもお聞かせください。

山田さん:一番最初は「音楽を視覚化しよう」という考えから、音楽学科の友人にモデルを頼んで演奏場面を描いていました。ただその具象表現が自分の決定的なテーマになるかというと、そうではないなと何となく考えていて。
色んなものを描いていくうちに、見えないものにアプローチしたいという思いから、発せられている「音楽」だけを描けないかなと考えるようになりました。
そこから少しずつ人物を崩していったり、幾何学模様で表現したり様々な表現を経て、最終的に今の墨流し技法を応用したオリジナルの表現にたどり着きました。

学生時代に描かれたピアニストの演奏場面
山田さんが執筆された論文「音楽の視覚化に見る日本画表現の可能性」

榮:初めから抽象を描いていたわけではなかったんですね。演奏場面を数多く描いていくうちに、何か音が形になって見えてきたんでしょうか?

山田さん:実は自分には元々、共感覚というのが備わっているようで、小さい頃から音楽とか言葉を聴くと何となく色が見えるんですよね。感じるというか。ただ作品にそれをそのまま表現しているかというと、そういう訳でもないんです。
例えば「クラシックを聴いてそれを描きました」としてしまうと、それは「りんごを見て描きました」と同じで、オリジナルを超えることはないのではないかと、自分は考えます。奏でられる音楽のような感動を、表現者としてどう表すかというのが、大切だと思うんです。

榮:山田さんの作品は「音楽の視覚化」といっても、特定の音楽を描いていたり、実際の音を色で表現しているわけではないんですね。

山田さん:音楽って、一つ一つの音が繋がっていくことでメロディが生まれて、そこに美しさを感じますよね。それと同じように、自分は画面に「何か」を起こして、それを受けて次の色、また次の色と、前の作業を肯定するように次の作業を続けていくんです。その積み重ねが、「音楽的な画面」といえるのではないかと。そしてそれが、論文の落とし所でもありました。

榮:「音を繋げる=色を重ねる」ということで、作品だけじゃなくて制作する過程そのものも音楽的なんですね!

山田さん:そうです。さらに作品一つ一つの並べ方でも音楽的に連なっていけるような作品群になっています。会場によって展示方法を変えればまた違った「音楽」になります。
なのでタイトルを「piece of music =音のかけら」1,2,3番というふうにしか名前を付けられないんですよね。

榮:確かに、例えばそこに「優しい音楽」というタイトルを付けてしまうと、名前の意味の方に意識がいってしまう気がしますね。
実験的な作品で、とても勉強になります!

自分の想像を超えた表現を求めて

榮:表現に用いている日本画、その画材についてこだわりなどはありますか?墨流しについてももう少し詳しくお聞かせ願いたいです!

山田さん:自分は岩絵具の発色が好きで使っていますが、アクリル絵の具やピグメント、エアスプレーなども使うし、ボーダレスにいろんなものを取り入れていきたいと思っています。最先端のアートを意識して、今自分ができる一番クオリティの高いものをいつも表現していきたいですね。
墨流しについては先ほどの話にもつながりますが、どのようにアプローチすれば音楽的といえるだろうかとずっと考えていて、その中で研究の対象になりました。
墨流しというのは、水面に墨を流し、それを紙に写しとるという技法です。これは日本古来から使われている技法でもありますが、調べていく中で、「扇面法華経」の琵琶を弾く人のうしろに、この技法が使われていることを見つけました。音楽を表現するために、古来から墨流しが使われていたということです。

榮:それは発見ですね。

山田さん:現在は、より自由に表現するために、墨流し技法をさらに応用した「新案墨流し」というオリジナル技法で、色や方法を工夫しながら制作しています。

榮:新案墨流しで出来る形はある程度自分でコントロールしてるんでしょうか?

山田さん:はい、ただ100%ではないです。
自分の想像を超えたいので、その方が予想外のことが起きる面白さがあります。

榮:まるで即興音楽のようですね!

山田さん:そうですね。それと自分は植物が好きで、植物そのままの形をトレースして作品に入れています。これは聞いた話なんですが、生花って植物を生けることで太陽を設定できるんだそうです(葉は太陽の方を向くので)。
だから自分も作品の中に植物をそのまま入れることで、画面の中に太陽を設定できるかなと思って。太陽、ひいては宇宙全部を作品の中に取り込めたら。全宇宙を使って一つの作品ができたら良いなという思いで制作しています。

榮:哲学的な壮大なお話ですね!一枚の作品の中に、色んな思いが込められているんですね。

山田さん:自分の作品は、生活に関わる全てのものごとによって出来ているのかもしれません。だから大袈裟かもしれないけれど、作品のためにより善く生きていかなければいけないなと、いつも考えています。

画材の後ろには自作の美術史年表。昨年度まで教員をされていたという山田さんならでは。

榮:では最後に、今年から作家活動に専念したと伺いましたが、今後についてお聞かせください。

山田さん:昨年まで学校の教員をしていました。もちろん素晴らしい職業ですし、教員をしていても調整しながら展示はできるとは思うんですが、仕事を理由に作家活動をセーブすることはしたくないなと思って決意しました。
今後についてですが、これは自分の絵の描き方にも通じていて、画面に表現したことが良かったことになるように次の一手を打ちたいと思っています。なので教員をやめて作家に専念すると決めたことが良かった事になるように、さらに良い絵を描いて前へ進んでいきたいですね。

榮:心が豊かになるお話をありがとうございました!

山田さんがご参加くださっている企画展「Breeze / 薫風」は6月6日まで(月曜定休)開催しています。ぜひ初夏の風を感じにいらしてください!

記事:榮菜未子 / 写真:木村宗一郎

山田 雅哉 / Masaya Yamada

画家、博士(美術)
2015年、愛知県立芸術大学 日本画領域としては初となる博士学位を取得
論文「音楽の視覚化にみる日本画表現の可能性」に於いて、二つの新技法の開発等 現代における日本画の可能性を拡げ、現在も研究を進めている。
1981 愛知県生まれ
2006 愛知県立芸術大学 美術学部日本画専攻 卒業
2008 愛知県立芸術大学大学院 美術研究科 日本画専攻 修了
2015 愛知県立芸術大学大学院 美術研究科 博士後期課程 修了
   博士(美術)学位取得
   論文「音楽の視覚化にみる日本画表現の可能性」を出版


Breeze / 薫風
山田 雅哉 / 小坂 未央 / 尾崎 雅子 / 中静 志帆 / 久保 裕子 / 津坂 陽介
2021年5月15日[土] – 2021年6月6日[日]

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