Andrew Vorland

作家や作品の魅力をさらにご紹介する企画「Artist Interview」。
第33回は現在、個展「Window on Life」を開催中のAndrew Vorlandさんに展示のテーマについてお話を伺いました。弊廊とは長いお付き合いのアンディですが、個展は5年ぶりとなります。アンディの楽しくて穏やかな人柄で終始温かいひとときになりました。ぜひご一読ください。

ー 久しぶりの展示となりましたが、今回の個展タイトルが「Window on Life」ということで、テーマについてお聞かせいただけますか。

Andrew Vorlandさん(以下アンディ)「今回は親父の故郷であるアイオワの農場の風景をメインにしてるんだけど。去年アメリカにいる親父が亡くなって、葬儀のためにアメリカに行った時に撮った作品がほとんどだね。
この農場は親父の故郷でもあり僕も学生の時に手伝ってたりしたから僕の故郷でもあると思ってる。今はいとこが経営してて出来るだけ毎年会いに行くようにしてるよ。今年は時間が取れなくて行けなかったんだけど、あぁそうかアメリカに行っても親父はもう居ないんだって思うとちょっと寂かったけど、親父ももう101歳だったから本人も家族も心の準備はできてはいたんだよね。」

ー 思い出が詰まった場所なんですね。

アンディ「そうだね、だから今回は親父へのオマージュの気持ちを込めて、自分の原点から今へと続くルーツを辿る旅のような展覧会になってるかな。」

ー 作品についてお聞きしていきますが、今回はポラロイドの作品も数多く展示されてますね。

アンディ「このポラロイドのシリーズは、場所は同じ農場がほとんどだけど1990年代に撮ったものなんだよ。これはポジフィルムで撮影したものをポラロイドに移して、そのネガが乾く前に画用紙に貼り付けて写し取る“ポラロイド・トランスファー”っていう技法で作ってるんだけど、写し取る際に湿気とか気温で色の出方や残り方が変わるから納得いくものが出来るまで何枚も刷ってる。だから同じものは一枚も出来ないし、アナログでアンティーク調のイメージに魅せられてこの技法を使ってるよ。」

ー 同じ場所だけど作品の中には30年くらい時間が流れてるんですね。

アンディ「そうだね、建物自体はもっと前から建ってるけど。今回赤い額縁の作品を入ってすぐのところに展示してもらったんだけど、これを見て分かるように建物の壁が真っ赤なんだよね。それで空は真っ青。最初はもう少しカラー作品を入れようかとも考えたんだけど情報が多いなぁと思って。だから始めに赤色のカラー作品を観てもらって、あとは観た人に想像してもらえたらなと思って。」

ー その分、額縁に赤や青が入っていて想像を掻き立てられますし、モノクロの作品が引き立ちますね。この額縁も今回お兄さんと手作りされたとか。

アンディ「そうそう、親父も元々大工みたいなことやってたし、兄貴も自分で家建てたりしてたから、今回は作品のテイストに合わせて兄貴に頼んで一緒に作った。色塗ってサンドペーパーで削ってを7回繰り返したかな。前にも一度作ったことあったけど、今回数が多かったから結構大変だった(笑)窓枠とリンクしたような作り方にしてるんだけど、実際この農場の建物も何度も塗り直したことあるしね。アメリカではミルクペイントって塗料をよく使ってて、日本でも売ってるのを見つけたから今回額縁に使ったんだけどさ、原料のところ見たら森永乳業って書いてあって日本のメーカーだった(笑)」

ー 額縁の雰囲気もそうですしモノクロ作品と相まって、観ているとなんだかとても懐かしい気持ちになってきます。

アンディ「写ってるトラクターや車も実際運転したことあるし。この車は50年代のフォードなんだけど、僕のおじさんが買って母も僕もこれで運転を覚えたんだ。今でも特別な時には表に出して動かしてるんだよ。」

タイトル
” Keep on truckin’. ” [ 転んでも、前へ進め。]

ー 詩的なタイトルも印象的です。

アンディ「農場のシリーズは親父が言いそうなことをタイトルにしてる。親父の格言というか説教というか(笑)そんなイメージで付けてみました。」

タイトル
” Look out the window. ” [たまには外を見ろ。]
タイトル
” There’s always light ahead. ” [暗闇の向こうには必ず光はある。] 

ー 一枚一枚に思い出が詰まってて、アンディの歴史を見ているようですね。

アンディ「本当、今回はありのままの自分という感じだね。最後ギャラリー奥の空間に日本の和室の作品が少し飾ってあるんだけど、ここは“辿り着いた場所”というイメージとして展示してる。親父にも僕にとってももう一つの故郷だから。目に見えないものへの心配りや静けさ、平穏。アイオワから続く親父の辿り着いた境地に、僕は辿り着けてるかはまだ分からないけどね。」

アンディの個展「Window on Life」は11月23日[日]まで開催しています。静けさの中に感じられる優しい空間にぜひお越しください。

インタビュー:榮菜未子 / 写真:木村宗一郎

アンドリュー・ボーランド  / Andrew Vorland

旅写真を中心に活動を続ける彼の写真は、自筆の文章と共にユナイテッドやJALの機内誌や、ローカル雑誌、その他にアメリカと日本の全国紙等に記載されています。
アメリカ人として日本で生まれ育った彼は、バイリンガルなだけでなく “バイカルチャー”(アメリカと日本の二文化に精通)であり、このユニークな観点は日本や外国での写真撮影や記事に活かされています。


Andrew Vorland 個展
Window on Life
2025年10月31日[金] – 2025年11月23日[日]

JILL D’ART GALLERY

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