内田 有

作家や作品の魅力をさらにご紹介する企画「Artist Interview」。
第20回は現在個展 「NEW CLASSIC」を開催中の内田有さんに、ギャラリーオーナーの田口が対談形式でインタビューさせていただきました。
ギャラリーとの出会いから作品に込められたコンセプトまで、貴重なお話をたくさん伺えましたので、ぜひご一読ください。

インタビュアー田口(以下略):まずは内田さんとジルダールの出会いからお聞きしたいなと思うんですが、アーティストの酒井由芽子さんに「ジルダールに合いそうな作家さんがいます」って紹介されて、東京に会いに行ったのがきっかけですよね。

内田さん(以下敬称略):覚えてます!10年くらい前ですね。東京のドーナツ屋さんで会ったんですよね。

ー そう!爽やかな人が来たと思ったら両手に作品抱えてきてくれて凄く印象的でした。そこから長いお付き合いになってますが、ジルダールギャラリーの印象は何かありますか?

内田:一番最初はベビテクターの向井正一さんと二人展(2013年)をやらせていただいて、オープニングパーティーをやったのを覚えています。手作りのピンチョスがあって、本当に良い空間の中でお客さまが様々な情報交換をしていて、おしゃれで若い方が多い印象でした。
名古屋でやる初めての展示で知り合いもいない中でしたが、たくさんの方がいらっしゃって購入していただいて、驚きました。

ー ジルダールのお客さまが求めているものと内田さんの世界観がマッチしたというのが大きいですよね。初めて作品を見た時の衝撃が大きくて『ジルダールで展示したら絶対良い!』って直感しました。

内田:ありがとうございます。それとジルダールさんは情熱的なギャラリーだなって感じています。流行りとかで選ぶのではなく、田口さんが自身に対してすごく正直なセレクションをしていて、そのブレないセンスで突き進んだ結果としてブランディングになりギャラリーの個性になっていると感じます。
それって情熱を持ってやり続けないといけないので、勇気がいるし凄いことだと思いますし、自分の作品もそこに選ばれているのがとても光栄です。

ー そういってもらえると嬉しいです。確かに、自分が好きで欲しいかどうかという気持ちを大事にしていますね。元々ポップアートが好きっていうのもあるけど、内田さんの作品からはポップアートへのリスペクトも感じられてとても共感しています。

現代社会の矛盾を秘める

ー では作品について、白くまのアイスキャンディーがモチーフの「Cool it」シリーズのコンセプトを改めてお聞かせください。

内田:現代社会の矛盾をアートを通してユーモラスに表現できたらなと思っていて、これは新しいパンチングメタルのシリーズにも一貫しています。

元々はガリガリ君とか普通のアイスキャンディーをガラスで表現していて、「溶けかけてるのに溶けない」のが面白いと思っていて。
その後イギリスに留学したんですが、向こうではコンセプトを重要視する授業が多くて、自分のアイスキャンディーにも何かコンセプトを込められないかなと思い始めたのがきっかけです。
そこから、溶けかけた白くまのかわいいアイスキャンディーが大量生産されている一方で、大量生産の影響で地球温暖化が進み実際の動物たちがいなくなっているという矛盾と人間のダークな部分への皮肉を込めつつ、かわいいもの表現したCool itシリーズが生まれました。

ー くまちゃん自体もシンプルなものから手書きのTシャツものが出てきたりと段々変化していますが、何かきっかけはありますか?

内田:社会問題を表現していくうえで、くまちゃんも裸のシンプルなものからバージョンアップしていってます。
例えばアロハを着ているものは世の中が暖かくなってきていることを表していますし、人物画のTシャツを着ているものはミュージアムショップとかで昔の絵画が作者はもうとっくに亡くなっているのに、プリントしてどんどん蘇らせて大量に売られている消費社会を表しています。ちょっと太ったくまちゃんに着せてるのでTシャツとともに人物画も少し横に伸びて歪んでいます。
浮き輪を着けているくまちゃんも、実はこれ救命浮き輪なんです。氷河が溶けて溺れてしまう白くまというのは実際にいてその皮肉を込めています。
どれも一見楽しげなんですが、そういった意味が込められています。

かわいい、けど怖い。
それが一つの作品の中にとじ込められているのがテーマとして魅力的だなと自分では感じていて、人間にも通じているところだなと思います。

ー 深い意味が込められていますね。かわいいから手に取る方も多いと思うので、こうして改めて聞くと驚かれる方もいらっしゃると思います。

内田:手に取って頂くきっかけは色々あって良くて、もちろん「かわいい」から入ってもらっても全然良いんですよね。表立ってこういう活動をしようとか訴えたいということではないんです。
例えばテレビの上に浮き輪のくまちゃんを飾っていて、いつか番組の特集なんかで溺れている白くまを見た時に作品が目に入って、ハッと気付くことがあるかも知れないなって。

新たな絵画表現

ー 今回は「NEW CLASSIC」というテーマになっていますが、この言葉のイメージは何かあったんでしょうか?

内田:白くまとパンチングメタルのシリーズを展示しようと決めて、この二つ共通するテーマが良いなと思っていて。
先ほどお話しした“矛盾”っていうのが一貫したテーマでもあるし、古典的なものをリスペクトしつつ新しい表現ができないかなということで「NEW=新しい、CLASSIC=古典」という相反する言葉を組み合わせたタイトルにしました。

パンチングメタルは新しい点描画の表現をイメージしています。点描画は昔からある技法ですが、当時もあまり流行ってはいなかったようで。なぜならとても大変だから(笑)大変なところに手を出してしまったなと思ってます。

ー パンチングメタルをこういう風に使って再度点描を提案するというのは内田さん以外で見たことがないので、新しい発見ですよね。

内田:初めは点描というよりリキテンスタインのようなポップな表現ができるかもと思って2014年くらいから少しずつやり始めたんです。そのうち一層だったものを穴の大きさを変えて二層にしたらどうなるかなとか、金属感をより出すために削ったらどうだろうと実験を繰り返して今のような形になっていきました。

ー パンチングに描かれているモチーフも、最初はCool itのくまちゃんだったと思うんですが、徐々に変わっていっていますね。

内田:段々、パンチングで点描という表現自体が面白いからモチーフがなんでも面白いだろうなって思えてきて。この表現であれば何を描いたとしても自身の作品だと分かりますし。
なのでモチーフを最初は自分で撮った写真にしようかとも思ったんですが、印象派の話で当時イーゼルを持って外に飛び出して風景画を描くのがとても革新的だったというのを読んで。
現代の風景画って何だろうと考えた時に、インターネット上にあふれている画像っていわば「現代の風景」なんじゃないかなと思ったんです。それでネットの画像を風景に見立てて点描することを思い付いて、パブリックドメインっていって著作権がない画像が集まっているところからインテリアに合いそうで絵になるものをたくさん集めて、現代の風景を閲覧するイメージで制作しました。
これからもモチーフはどんどん増えると思います。

ー アンディ・ウォーホルやリキテンスタインなども、その時代の象徴的なものや風景を切り取ってそれをシルクスクリーンにしていて、現代でも色褪せていないですよね。

内田:そうですよね。そういった意味で自分もポップアートの流れは踏んでいるつもりでいます。

ー 内田さんの作品も20年、50年経った時にそういう風に見ていただけたら嬉しいですね。

ー では最後に、見てくださる方に見どころやメッセージはありますか?

内田:パンチングメタルシリーズは遠くから見たり近付いて見たり、見方によって色んな発見ができる作品なので、素敵な空間でゆったりとしながら見ていただけたら嬉しいです。これはどうやって作ってるんだろうって想像してもらうのも楽しいかなと思います。

ー お客さまの反響が楽しみですね。これからも宜しくお願いします。

かわいさの中に現代社会の矛盾を抱えながらその問題をポップに表す内田さんの作品たち。「NEW CLASSIC」は11月20日[日]まで開催しています。ぜひお見逃しなく。

インタビュー:田口あい / 写真:木村宗一郎 / 編集・写真一部:榮菜未子

内田有 / Yu Uchida

東京生まれ。東京藝術大学院 工芸専攻 卒業
ガラスを主な素材とし鋳造技法でアイスキャンディーをモチーフに制作。
白くまをキャラクター化した[ cool it ]シリーズでは溶けたアイスキャンディーの形にすることにより消えゆく環境保護の代名詞と日本のポップカルチャーに通じる“かわいい” を融合した大量消費社会がコンセプト。現代社会に潜む矛盾とアイロニックな作品を試みている。
鉄腕アトム・ウルトラマン・チロルチョコ・MILK BOY・CROSS(筆記具ブランド)等とコラボレーション作を展開。
日本国内、イギリス、ドイツ、韓国も含め個展・企画展・アートフェアに参加多数。


内田 有 個展
NEW CLASSIC
2022年11月5日[土] – 2022年11月20日[日]

JILL D’ART GALLERY

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