榮菜未子 / 柴田祐希 / 野村仁衣那 / Yasuyo

作家や作品の魅力をさらにご紹介する企画「Artist Interview」。
第21回は4名の作家による企画展 「Figgy Pudding」にご参加くださっている柴田祐希さん、野村仁衣那さん、Yasuyoさん、編集担当の榮菜未子さんにギャラリーオーナーの田口を加え、ワイワイと楽しく懇談させていただきました。寒い季節に温かな時間となりましたので、ぜひご一読ください。

※メイン写真(左から):柴田祐希、Yasuyo、野村仁衣那、榮菜未子

インタビュアー田口(以下略):まずは今回初めて展示してくださる方もいらっしゃいますので、簡単に自己紹介と作品のコンセプトをお聞かせください。

「榮菜未子です。人と動物と植物を融合して描いています。生きるもの皆同じという感覚で分け隔てなく描きたいと思っていて、見た方にほっこりしてもらえたら良いなと思ってます。」

野村「野村仁衣那です。プラスチック製品にハンダゴテで穴を開ける“Life Through Holes”という「素材の起源」にフォーカスを当てたプロジェクトを展開しています。プラスチックは石油から出来ているんですが、その石油は太古の動植物の死骸が地中に堆積して長い時間をかけて作られていて、一見無機質な素材に感じるけれど元々は命があったんだっていうことを、光の粒を沢山作って細胞のように見せることによって現実化させています。」

Yasuyo「Yasuyoです。私は元々イラストレーターをしていましたが、現在は主に抽象画を描いています。今生きていることが奇跡的なことなんだという想いをエネルギーにしてそれを皆と分かち合いたいと思っています。描く時は何も考えないようにしていて、全くどこに行くか分からない中で、一番面白くて美しいものを発見したいという思いで描いています。」

柴田「柴田祐希です。私は写真家として活動していて、今回は“Where is Pixy?”というシリーズを展示しています。元々現実と空想のイメージを組み合わせたいと思って制作に取り組んでいますが、今年に入ってからは「妖精探し」をテーマに、妖精が住んでいそうな場所をイメージしたり、作品タイトルも色んな国の妖精や神話の中に登場する精霊の名前を付けています。写真は目の前にあるものを写し出しますが、敢えて目に見えない世界や空想を写真で表現したいなと思っています。明るさや色味はカメラで調整していますが合成などはしないことを心情にしています。」

ー 野村さんとYasuyoさんが初めてジルダールに展示してくださいましたが、また新しいハーモニーが生まれたんではないかなと思います。

ー 今回「Figgy Pudding」というタイトルの企画展ですが、最初にタイトルを聞いた印象は何かありますか?またそれを受けて作品制作に変化があれば教えてください。

「まず最初に受けた印象は“可愛いな”でした。12月に食べるFiggy Pudding(イチジクのケーキ)ということで、クリスマスや年末など何かとイベントも多い季節なのでワクワクして温かい雰囲気に想いを馳せました。
私自身これまであまり冬に展示する機会が無いのもあって普段は新緑の季節をイメージした作品が多いんですが、今回の展示に合わせて少し色味を変える新しい試みができたと感じています。何か温かなものに包まれているような気持ちになってもらえたらなと思います。」

ー 確かに前回展示していただいた時より雰囲気が変わっていますね。テーマがあることで新しい発見ができたようで嬉しいです。

Yasuyo「私もまず可愛いなと思って。普段は“こんなふうに描こう”と意識して描いてないので初めは企画に合うかなと少し不安に思ったんですが、私の絵を見て「美味しそう」と言ってくださる方がいらっしゃって、私の作品は目から入る栄養なんだって思っているところがあるので、そこにテーマとの繋がりを感じました。頭にふんわりとテーマを置きつつケーキの中に入りそうな色、例えばチョコレートとかラズベリーなどの色味を新作に取り入れてみました。
あとはタイトルにお菓子とか食べ物の名前を入れて、観た方がより楽しめるようにしました。」

野村「私はクリスマスディナーが浮かんできました。それなら私のインスタレーション作品にも合うのではないかなと思って、雪のクリスマスの温かな食卓をイメージしてテーブルセットの作品を持ってきました。
新しいパッケージのシリーズは、雪が降っているようなイメージでアクリルケースに穴を開けました。」

ー 以前東京で個展を見させてもらった時からずいぶん作品も新しく進化していると感じました。

柴田「私は普段は淡い色目の作品が多いんですが、今回は冬やクリスマスをイメージして黒を多く使ったりシックな色目や、パキッとした強めの印象の作品を作りました。」

ー 皆さん12月に対するイメージが重なりつつも少しずつ違っていて面白いですね。

ー では今回展示してくださった新作についてそれぞれお聞かせください。

「さっきYasuyoさんも色について仰ってたんですが、「チョコレート」っていう名前の絵の具があって、普段は使っていなかったんですがケーキにちなんで今回混ぜてみました。今までは花や植物を纏っている作品が多かったですが、今回はもう少し抽象的なイメージにしたいなと思って。例えばDMに使われている作品は、日々の出来事だったりアイデア、自分を取り囲む様々な現象がそれぞれ形になって頭に浮かんでいるイメージです。」

野村「一番最新でいうとDMに使ったタバコや牛乳パックの作品なんですが、これまで既製品に穴を開けていたんですが、今回は本来プラスチックで出来ていないものに対しても自分で形作って穴を開けてみました。
また平面の作品は、物が変化していくことを“老いる、朽ちる”って結構ネガティブな捉え方をすることが多いと思うんですが、全てフラットに見てみるとどれもただの“状態”でしかなく、私たちもそれと同じでそこに生命が宿っているかどうかの違いでしかなくて。そう考えると目の前にあるものは全て仲間というか、同じようなものだっていう想いから「immortal(不朽)」というタイトルの作品が生まれました。」

Yasuyo「今“不朽”という話を聞いていて、私も思うことがあって。なかなかうまく説明できなんですが昔、“時間の姿”を夢で見たんです。」

ー 面白そうなお話ですね。

Yasuyo「それは摩天楼を上から俯瞰で見たような姿をしていて、“今ここに全てがある”って感じたんです。それがスーッと一本の線になっていて、その線上に今日、明日、明後日…と日々が続いているんだって、ふと悟った瞬間に目が覚めたんですね。その夢が凄く印象に残っていて、今ここに生きていることは奇跡的なことで、良いことも悪いことも全て受け入れて絵を描き始めました。永遠の時間が今ここにあるというのを込めて描いています。」

野村「素敵なお話ですね!」

「なんか物語に出来そうですね。」

Yasuyo「うまくまとめられなくてステートメントにも入ってないんですが、いつか入れたいなと思ってます。」

ー 今自宅に以前購入したYasuyoさんの絵を飾っていて、とても心地良さを感じるんですがそういった想いが込められているからかもしれませんね。

ー 柴田さんは新作について、いかがですか?

柴田「今回初めて丸い形の作品を作りました。写真は四角いという固定観念を取っ払いたいなと思って。カメラのレンズって丸じゃないですか、人の目も丸い。それにクリスマスのツリーに飾るオーナメントも丸いし、プレゼントのようなイメージで可愛いかなと思って。」

ー 丸くすることでトリミングされると思うんですが、大変さはありましたか?

柴田「そうですね。画面で見ている姿も四角なのでイメージするのが難しかったですが、面白かったです。思いついたらやってみたい派なので色んなことを試してます。」

ー 確かに、前回はフレームの中に写真が浮いたような作品を作っていらして、今後また変化していくのが楽しみですね。

ー せっかく4人のグループ展なので、それぞれの作家さんに聞いてみたいことなどはありますか?

柴田「作品を制作する時のスパンというか、スタイルは皆さんどうしていますか?作品展など発表の場が決まってからそこに向けて作るのか、毎日作っているのか。」

Yasuyo「私はわりと日常的に作っていますね。もちろん疲れて休む時もありますけど。偶然性を楽しんでいるのかもしれないです。」

野村「私は街とかスーパーとかホームセンターで穴を開けたくなるものを発見した時ですね。いつも探しちゃってるし、見つけたら開けたくなります(笑)」

「完成した姿って、手に取った時にある程度見えるものですか?」

野村「この形をやりだしてから一年ちょっとですが、最近見えるようになってきました!いつかワークショップをやりたいなとか考えてます。」

一同「やってみたい!」

「私の場合は発表の場が決まってからそこに向けて制作してますね。日常的に作りたいなと思っているんですが、お尻が決まらないと動けないタイプです(笑)展示が終わった後は燃え尽きてだらだらしちゃいます。」

柴田「私もわりとそっち寄りなので、他の方はどうなのかなと思って聞いてみました(笑)」

ー いろんなタイプの作家さんいますよね。

野村「制作中に何か音楽とか聴いたりしてますか?それとも無音で集中してますか?」

Yasuyo「その時の気分でいろんな音楽やラジオを聴いたりしますね。さっき毎日描いてますっていいましたが、そんなに長時間集中してはいられないのでわりとYoutube観たりとか(笑)」

「一旦作品から離れることでまた見え方が変わってきたりもしますよね。私もジャンルは問わず音楽やラジオを聴いてます。」

柴田「作品撮っている時は何も聞いてないかな。」

「山とかに行かれて撮影されてるんですか?」

柴田「そうですね。山に行ったりもします。」

野村「自然の音ですね。私も音楽を聴いているんですが、集中して穴を開けるので外部の刺激が欲しくなるんです。会期が迫ってくるとお祭りのお囃子を聴いてるって作家さんがいて面白いなって。」

「それいいですね(笑)今度試してみよう。」

ー お話が面白くなってきたところでまだまだ聞きたいですが、今回はこの辺りで。多くの方に皆さんの作品を見ていただいて、楽しんでいただけるように私も伝えていきたいと思います。

寒い季節にホッと心温まる企画展「Figgy Pudding」は12月25日[日]まで開催しています。ぜひ4名のそれぞれの色を観にいらしてください。

インタビュー:田口あい / 写真:木村宗一郎 / 編集:榮菜未子

榮菜未子 / Namiko Sakae

「絵からはじまる・絵からつながる・絵からうまれる・絵からひろがる」をコンセプトに、見た人が笑顔になるようなアートを目指して絵を描く。
個展やグループ展のほか、ワークショップやオリジナルイラストを使った雑貨の制作・販売をはじめ、壁画、キャラクター制作、挿絵、紙媒体やWebサイトのデザインなど、イラストレーター・デザイナーとしても活動している。

柴田祐希 / Yuuki Shibata

写真を主なメディアに、名古屋市を拠点に活動。
ドキュメンタリーを活動の中心に、これまで国内外のアート展示・プロジェクトに参加しています。また2022年には、セルビアの国立美術館で個展が開催されています。
今回の展示では、[Where is Pixy?]シリーズを中心とした新作を紹介します。
[Where is Pixy?] とは妖精を探す試み。 これまでヨーロッパ・ アジアのさまざまな場所で撮影しています。現実とファンタジーを繋ぐ存在としての妖精、それを探す、あるいはたまたま出会うような奇跡・偶然性を表現しています。

野村仁衣那 / Nina Nomura

1993年 東京都生まれ。2021年桑沢デザイン研究所スペースデザイン科 卒業。
“Life Through Holes”は、微細な穴で物体の表面を埋め尽くし、素材の起源に光をあて、モノと人との関わりにおける真の豊かさとは何かを模索するプロジェクト。今回は、“Normally Junkie”をコンセプトに、生きるには本来必要ではないが、生活に“彩り”を与える。嗜好品をモチーフとした、「理性だけではとらえられないもの」に光をあてた作品を展示します。

Yasuyo

京都市出身。京都精華大学 卒業後、東京を拠点にイラストレーターとして活動。 女性や現代の暮らしをメインに描きながら、百貨店、商業施設、ブランドの広告をはじめ、雑誌、web、書籍、ananやVOGUEなどファッション誌、パッケージなどを手掛ける。2011年より、京都に拠点を移しアーティストとしての活動を再開。キャンバスにアクリルガッシュで描く抽象表現を制作しながら国内外で精力的に活動している。
これまでの展示 / 受賞歴に、全国大学版画展 買上賞受賞、現代版画ビエンナーレ入選、ニューヨークプリントアートビエンナーレ入選など。


Figgy Pudding
榮菜未子 / 柴田祐希 / 野村仁衣那 / Yasuyo
2022年12月3日[土] – 2022年12月25日[日]

JILL D’ART GALLERY

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