加藤 ノブヤ×ジョバン マティック × 石川 将士

作家や作品の魅力をさらにご紹介する企画「Artist Interview」。
第26回は現在企画展「scene 01 – 天・地・人」にご参加くださっている加藤 ノブヤさん、ジョバン マティックさん、石川 将士さんにお話を伺いました。加藤さんは約3年ぶりの展示、ジョバンさんと石川さんは今回初めての展示となります。さらにジョバンさんは現在セルビア在住ですが来日のタイミングが重なり設営とインタビューにもご参加くださいました。英語を交えながら、すぐに打ち解けた3名。
終始とても和やかなインタビューとなりましたので、是非ご一読ください。

※メイン写真(左から):加藤ノブヤさん、ジョバン マティックさん、石川将士さん

ー はじめましての方もいらっしゃいますので、作品のコンセプトやモチーフについてお聞かせください。ではまずジョバンさんからお願いします。

ジョバンさん(以下敬称略)「私にとって、作品のコンセプトは現代と伝統のバトルのようなものです。つまり、(セルビアで一般的な)キリスト教のような宗教の形とソーシャルメディアのような新しいチャネルが、どのように私たちに影響を与えているのかということを考えています。」

ー 作品に入っている「いいねマーク」などのアイコンが特徴的ですが、同時に十字架やドクロなども描かれているのはそういった意味合いがあるんですね。使っている素材についてもお聞かせください。

ジョバン「これまで学んできたセラミックを中心としながらも、作品としてはミクスドメディア・素材のコントラストにいつも興味を持っています。今回展示している作品のようにセラミックと組み合わせると、新聞紙も違った印象を与えてくれる。特に作品で使用しているタブロイド(大衆紙)については、世界中のものをコレクションしています。今のソーシャルメディアのように、人々が情報を得るためのチャネルとして興味があり、誰かが旅行に行くときには現地で買ってきてくれるように頼んだりしています。日本にもいろいろな種類の新聞があるんだね。今回展示しているものは日本に住んでいたときに入手したものを組み合わせています。」

ー それでは次に、石川さんお願いします。

石川さん(以下敬称略)「人体やそれにちなんだ形が一番多いモチーフです。僕の制作はドローイングから始まっているんですが立体造形が着地点になっていて、レリーフなどの二次元的な表現はその中間地点として作っています。」

ー 人体をモチーフにしてなぜ鋳金で作ろうと思ったか、きっかけはあったんでしょうか?

石川「高校時代にデッサンの練習をし始めた頃に遡るんですが、デッサンって陰影をつけ立体的に描くんですが、僕は線でささっと描くのも好きだなと思っていて。ある時ヌードクロッキーをしたんですが、少ない線を拾ってシンプルに表現するというのが自分の中で凄くしっくりきたんです。そのままハマり続けて今に至る感じですね。母が書道家ということもあって、素早く書く潔さや強さのようなものに惹かれているのもあります。」

ー なるほど、どこか通じるところがありますね。子供の頃から見て来たものが影響しているのかもしれませんね。

石川「その影響で白黒っぽいものしか作れないのかもしれないですね(笑)」

ー 加藤さんは3年ぶりの展示ですが、新しく取り組まれている木目のシリーズはまた随分と作風が変わりましたね。

加藤さん(以下敬称略)「そうですね。元々水彩で動植物を描いていますが今回のシリーズは、動物と植物に共通する“生物の美しさ”を端的に表現しています。動物の陰影の中に木目が加わることによって、よりリアルな動物の生命感を与える効果があると気付いたんです。違和感なく見えるのはきっと植物と動物に共通する“生命のパターン”のようなものを自然に感じ取っているからだろうなと思います。」

ー 木目はいわば木の肌のようなものですから、共通する生命感というのはすごく納得です。

加藤「もともと木目が芸術的で美しいなと思っていて、その力を借りながら描いているという感じです。自然物を表現するのに自然物を使うことに勝るものはないですよね。」

ー では次に新作についてお聞かせください。

ジョバン「今回4つのシリーズを展示しています。それぞれemoji(絵文字)やロゴマーク、そして伝統的なモチーフなどが組み合わされています。自身のルーツから汲み取る今の時代や社会性を表現しています。
私はとてもカラフルで面白い人間でありたいと思っていますが、掘り下げれば掘り下げるほど、コンセプチュアルになっていくような作品が好きなんです。
複製や量産されるものの象徴としてクッキーカッター(型を抜くためのもの)という切り口から、アイコンの形を作品にしたもの、そして型を抜いた後の余りともいえる部分をくり抜かれたセラミックで表現しています。」

石川「新しいものだと“Okay.”という作品が自分では結構気に入っています。鋳造していて思うのが、オブジェとして見るのと花器(使えるもの)として見るのでは、捉え方や反応が変わるのが不思議だなといつも思っていて、この“Okay.”という作品も初めは穴が空いていて花器として使えるようになっていたんですが、オブジェとして楽しんでもらいたいと思い穴を塞いでみました(笑)」

ー こちらのブランコや歯ブラシをモチーフにしたシリーズも、また少し雰囲気が違いますね。

石川「そうですね。子供が産まれて、子供と生活するようになって制作にも変化がありました。今まではドローイングから起こす作業をしていたんですが、このシリーズは全く何を作るか決めずに素材の形などを見ながら直感的に作っています。」

ー ライブ感があって面白いですね。日常的なものがモチーフになっていて温かさを感じます。

ー 加藤さんの木目のシリーズは全て新作だと思いますが、以前別の展示で拝見した時よりもより進化している印象があります。

加藤「そうですね、より精度を高めています。なるべく木目を殺さないように、パソコンの画面上でたくさんシミュレーションして、木目に合って一番しっくりくる動物や構図を選んで描いています。」

ー この動物を描こうと思って描くのではなく、木目からイメージされるものを描くというのは、本番よりもそこに至るまでの工程がとっても大変そうですね。

加藤「そうなんです。なので出来上がった時に自分で描いたという感覚があまりなくて、描かされているような、陶芸や彫刻などに近い感覚があります。」

ー それぞれ異素材で表現しているものも違うのに、どこか統一感のある空間になっていて面白いですね。

ジョバン「3人それぞれのメディウムは違うけど、どこか似ているところもあってそれが面白さに繋がっていると思う。 モチーフや形の考え方は似ているけれど素材が違う。 だからとても相性が良いんだと思いました。一人ずつ区分けされて展示されていますが、ずらっと見渡しても混乱しない。何らかの繋がりや共通点があるのが伝わりますね。」

石川「DMのデザインを見た時点で何か通じるものを感じましたよね。とても素敵な展示になって嬉しいです。」

企画展「scene 01 – 天・地・人」は11月26日[日]まで開催しています。
三者三様の表現と調和の取れた世界観を、ぜひ体感しにいらしてください。

インタビュー:榮菜未子 / 写真・翻訳:木村宗一郎

加藤 ノブヤ / Nobuya Kato

1986年、岐阜県生まれ。金沢美術工芸大学デザイン科工業デザイン専攻卒。
にじみという自然現象や水墨画のエッセンスを取り入れた技法を用いながら、自然物がもつ美しさへの畏敬の念、動物・植物・鉱物などの質感の美しさを表現しています。これまでの展示参加に、「SICF24」スパイラルガーデン (東京 / 2023)、「Animals」Node(愛知 / 2022)など。また近年では、オフィス・工場やレストランなどでの壁画制作も行なっています。

ジョバン マティック / Jovan Matić

1996年、セルビア・ベオグラード生まれ。ベオグラード芸術大学応用美術陶磁専攻修了 / キャノンファンデーションリサーチフェロー / 多治見市陶磁器意匠研究所 卒。
現在のトレンドやアイコンなど、社会構造や歴史を現代的に解釈 / モチーフとしながらセラミックを主としたミクスドメディアの作品を通じ表現しています。現在はセルビアを拠点にしながら国内外での作品発表を行っています。
これまでの展示参加に、「Graduation Exhibition」Voice Gallery (多治見 / 2023)、「Abundance Zone」November Gallery( Belgrade, Serbia / 2022)など。

石川 将士 / Masashi Ishikawa

1992年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻修了。
どこかプリミティブなかわいさがありながらも現代的なオブジェクトや花器、鋳金という技法のもとで、真鍮や青銅などをもちいて制作しています。現在は富山県を拠点に活動しています。
近年の展示参加に、「Artworks for ROLF BENZ TOKYO」(東京 / 2023)、「泉屋ビエンナーレ2023 Re-sonationひびきあう聲」泉屋博古館(京都 / 2023) など。


scene 01 – 天・地・人
加藤 ノブヤ / ジョバン マティック / 石川 将士
2023年11月4日[土] – 2023年11月26日[日]

JILL D’ART GALLERY

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