新埜 康平
作家や作品の魅力をさらにご紹介する企画「Artist Interview」。
第36回は現在、個展「Montage of Noise」を開催中の新埜 康平さんです。弊廊では企画展「scene 04 – Poems and Thoughts」以来2年ぶりの展示で、今回は初の個展形式ということもあり、改めて作品や心境の変化などについてお伺いしました。
ぜひご一読ください。
前回のインタビューはこちら
Artist Interview #29 新埜康平×野村仁衣那


ー 前回のインタビューから2年ほど経つんですが、その間に随分作品に変化が生まれたと感じてて、素材だったりモチーフだったりについて改めてお伺いできればと思います。
新埜さん(以下敬称略)「日本画材を使って和紙に描いていくことは変わらずやっているので、自分の中ではあまり特別に何かを変えた気はないんですが、ただ素材について以前よりも意識するようになって作品へのアプローチが変わったというのはあるかもしれません。
素材と対話するように行き来することで自然に変わっていったような感じで、例えば今回展示している山の作品でいうと手前に見える山は緑青(銅などの金属が空気中の水分や酸素と反応してできる青緑色の錆)で描いてるんですが、錆びていくその現象を中心に作品を作り上げています。
天然の部分は自分ではコントロールできないところなので、むしろその変化する様子を見つめながらそれをベースにモチーフを決めたりどう仕上げていくかを考えています。」
ー 素材に着目するようになったきっかけは何かあったんでしょうか?
新埜「物質と向き合うというのは昔からやっていたんですが、昨年1ヶ月ぐらい中国のレジデンシーに行かせていただいたのがきっかけで、より深く掘るようになりました。現地の作家さんで素材研究している人たちがいて交流していく中で自分の作品についても向き合うことが多かったんです。向き合っていく中で天然の色に着目して、そこにある自分が美しいと思うものを見つけて平面に起こしてみようという思いに至った感じですね。錆のシリーズはその頃から始めました。
その試みと今までやっていた昔の技法と現代のカルチャーをミックスさせることも入り込んで、今のような変化が生まれたのかもしれないですね。」


ー 抽象的な表現だったり日本画的なモチーフも近年増えたように感じるんですが、それも素材からきてるんでしょうか?
新埜「そうですね。日本画のモチーフについては元々日本画が好きで専攻したっていうのがあるので、原点回帰のようなところもあります。」
ー 茶道も始められたと伺ったんですが、そういったことも作品に影響を与えていますか?
新埜「それはありますね。茶道は完璧じゃないものを美しいとする文化でそれが侘び寂びに繋がっているんですが、完璧に揃ってないものの美しさを感じたり余白を想像してもらうというのは以前より多くなった気がします。
最近は“描かないを描く”というのをより追求しているところはありますね。
余白の部分を意識して、例えばこの竹の絵だったら笹を描いているというより笹以外の部分をどう魅せるかを意識して描いていくというような感じで、そういったことは茶道でも学ばせていただいてます。」


ー 弊廊では初個展になりますが、タイトル「Montage of Noise」についてお聞かせください。
新埜「今回キュレーターの木村さんと話し合いながら決めていったんですが、陰翳礼讃とか侘び寂び、余白という部分をテーマに入れたいと考えていて。見えない部分の美しさというところをイメージしています。
タイトルにある“Montage”は編集や繋ぐという意味を持つ言葉ですが、映画などのストーリーでいう場面と場面を繋ぐ部分、展開が切り替わる間みたいな部分を作品のモチーフとしているので、そういう曖昧ではっきりしない部分を“Noise”として今回タイトルに付けました。」
ー 前回のインタビューで、作品と自分との間にベールがあるような少し距離感があるように描いていると仰っていたのがとても印象に残っているんですが、それとも通じていきますね。
新埜「そうですね、そこはずっとテーマとして変わらず描いています。
Noiseの部分でいうと今回は素材も当てはまるのかなと思っていて。錆とか自然現象のようにコントロールできないものって人にとってはノイズだったりするので。例えば乗ろうと思った自転車が錆びてたりとか(笑)僕にとってはそれが美しいと思って制作しています。」


ー インスタレーションについてもお聞かせください。今回映像も初めて作ってくださったんですよね。
新埜「元々映像として記憶しているものを紙に起こして作品を作っているのもあって今回初めて制作してみました。中国のレジデンシーだったり、香港や京都もありますね。訪れた色んな場所を繋いでいます。」
ー 山の景色や車のヘッドライトなど作品とリンクしている映像が多くて、新埜さんの目線や脳内を覗き見ているような感覚になりますね。
新埜「インスタレーションもそうですが、今回はサイズ感だったり飾り方だったりジルダールさんの展示空間を意識して作った作品が多いです。展示棚に飾ることも考えて、せっかくなら今まで作ったことない立体作品を作ろうと思って屏風の形にしてみたり。」
ー 確かに屏風型は初めてみました!今回の展示をきっかけに新たな作品が生まれたなんて嬉しいです。
新埜「今回の展示は“見立て”を意識して作ったというのも大きいです。観葉植物や他の作家さんの作品などを一緒に置いてみたり。お家の中の色んなものとの組み合わせを想像して楽しんで頂けたら嬉しいですね。」





新埜さんの個展「Montage of Noise」は9月13日[日]まで開催しています。
進化を続ける新埜さんの今ここにしかない空間をぜひお見逃しなく。
インタビュー:榮菜未子 / 写真:木村宗一郎

新埜 康平 / Kohei Arano
1990年、東京生まれ、東京を拠点に活動。
伝統的な日本画の技法と、余白やタギング(文字)の画面構成にサンプリング(再構成)された自然と都会の情景。伝統とストリートカルチャーを独自の感覚でアップデートしながら、現代性を感じる作品世界を構築しています。近年では国内のみならず、中国や韓国、台湾などでも精力的に発表を行なっています。
これまでの主な受賞に、 Independent Tokyo 2023 (小山登美夫賞)など。
新埜 康平 個展
Montage of Noise
2026年8月22日[土] – 2026年9月13日[日]
JILL D’ART GALLERY




