堀川 由梨佳

作家や作品の魅力をさらにご紹介する企画「Artist Interview」。
第13回は、現在個展「people ≒ 〇〇」を開催中の堀川 由梨佳さんにインタビューさせていただきました。堀川さんの代名詞である“occhan(おっちゃん)”。occhanの存在、堀川さんの作品に対しての想いなどを伺いました。
ぜひご一読ください。

ー まずはタイトルについて、「people ≒ ○○」というタイトルを最初に聞いた時にとても可愛いタイトルだなという印象があったのですが、コンセプトについてお聞かせください。

堀川さん(以下敬称略):私はずっと「人」というものをモチーフに探究して表現しているのですが、今回は“人” ≒(ニアリーイコール:おおよそ等しいこと。 ほとんど等しいこと。)○○、絶対イコールではないけどそれを仮定する“もの”にフォーカスを当ててモチーフにするというのを自分で課題設定しまして、今まで使っていたボーダーや雲など、そういったものとの関係性を表したくてこのタイトルにしました。
○(丸)というのも、攻撃性のないかたちで私の中でとても大切にしているものなので、タイトルの中に入れました。

ー なるほど、確かにocchanもフォルムが丸いですもんね。

堀川:そうなんですよ、人が知覚するかたちの中で一番優しくて、かつ完全体なかたちが丸だと思っているので、フォルムには結構こだわっています。

“occhan(おっちゃん)”という存在

ー 堀川さんといえば“occhan(おっちゃん)”というイメージが強いんですが、そもそもこのキャラクターが誕生した時期やきっかけを教えてください。

堀川:大学2回生くらいからocchanを作り続けています。誕生のきっかけは色々あるんですが、大きいのはそれまで人物でも女の子だったり様々描いていたんですが、「こうあらねばならない」という固定的な概念を自分の中から取り払いたいと思った時に、自分の中で一番近くて遠い存在として生まれてきたのが“occhan(おっちゃん)”だったんです。

ー 人物をモチーフに描いていく中で、徐々に丸みを帯びた“occhan(おっちゃん)”という存在になったわけですね。

堀川:そうですね、以前はもっと人の毒々しい部分などにフォーカスを当てていたんですが、そういったものを段々と受け入れて自分の中で明るいものに転換し昇華させるという今のスタイルに落ち着いていきました。

ー 思考を雲になぞらえたりしていると伺ったんですが、ボーダーにも何か意図があるんでしょうか?

堀川:ボーダーに関しては、元々色んなものに捉われているというところから囚人のイメージといった意味もあったんですけど、ボーダーの歴史的な背景にも「忌嫌われる者」っていうところもあって、それらを含めてそういったマイナスなものを敢えて使って、明るいものに変えていくというところに意味を感じています。あとは立体のフォルムをより強調するのに効果的なところも気に入って使っています。
最近ではボーダーを、これまでは「服として纏うもの」と捉えていたんですが、先程の話にもつながりますが、それも「こうあらねばならない」という固定概念に自分自身も捉われていたなといことに気付いて。もっと概念的なボーダーとしての部分にフォーカスを当て始めました。
イメージが自由になったことで、「纏うものだけじゃないボーダー」というのが自分の中で見えてきて、今の新しい平面を作るきっかけになりました。

ー そういった意識の変化があったんですね。

堀川:モチーフを選ぶきっかけも、自分自身が体験したことや自分を取り巻く環境が全て関係していて。人というものを観察していく中でより境界や違い、ボーダー(線)などがとても意識の中に強くなっていきました。そういったものを受け止めて作品に昇華していくという繰り返しをしていますね。

平面と立体の境をなくす

ー 平面の表現が以前と変わってきた印象を受けますが、平面と立体で作る時に何か意識的な違いはあるんでしょうか?

堀川:元々平面の中で一つの物語を作るということをしていて、立体はその合間の息抜きので作るような位置付けだったんですが、段々と立体を作品として置くようになって。その頃は平面と立体って自分の中でも少し壁があって別々のもとして捉えていたところがあったんですが、最近は同じ空間表現としてあまり変わらないと感じてます。

ー 元々平面が始まりだったんですね。知らなかったです。

堀川:そうなんです。平面と立体というところで今まではなかなか折り合いがつかなかったりしたんですが、そこに境が無くなってきました。コンセプト自体はずっと一貫して変わらないので、立体表現でも動きやフォルムから生まれる物語に視点を変えていったら、今のように表現が変化していきました。

ー 息抜きとして立体を作っていたことで、逆に平面にも影響が現れたということでしょうか。

堀川:そうなりますね。作り続けていくことで自分の中で良い変化が生まれて、相乗効果でどちらの表現もブラッシュアップ出来てきているのかなという気がします。
立体を置くと空間がガラッと変わる面白さがあって、それが立体を使い始めたきっかけでもあるんですが、平面も立体も全部をひとつの空間表現として捉えていきたいなと思っています。

ー 今回特に思い入れの強い作品ってあるんでしょうか?

堀川:そうですねー、一つは選べないんですが、100号の平面を描いたのが久しぶりで。立体は徐々に大きいものを作っていて、平面もちゃんと向き合っていきたいと再確認した時に大きい作品に挑戦したいと思って。最初は不安だったんですが、、、意外と描けました(笑)ボーダーへの意識もちゃんと落とし込めたかなと思います。

ー この作品私好きです!occhanが飛び出して空に溶けているようで。

堀川:ありがとうございます!タイトルも貫通するとか、浸透してお互いが関わり合っているようなイメージのタイトルを付けているので、そう思っていただけると嬉しいですね。

100号の大作「penetrate」

ー では最後に、今後やってみたいことなどあれば教えてください。

堀川:常々思っていることがあって、重力だったりバランスというところを表現したいなと思っているんですが樹脂だとやっぱり限界があるので。バルーンだったり柔らかい素材にしたりして、子供が触れたり、公園にドーンとでっかいocchanが居たり。空にocchanが浮かんでいたり。地域で関われる作品を作ってみたいです。

ー それめちゃくちゃ良いですね!

堀川:子供からお年寄りまで楽しめるアート作品を作りたいですね。新しいことをやっていきたい派なので、どんどん挑戦していきたいです。

ー 今後も楽しみにしています!ありがとうございました。

堀川さんの個展「people ≒ 〇〇」は4月24日(日)まで(水曜定休。最終日は16:00まで)、ぜひocchan(おっちゃん)とそれを取り巻く一人ひとりの「〇〇」を見つけにいらしてください。

記事:榮菜未子 / 写真:木村宗一郎

堀川 由梨佳 / Yurika HORIKAWA

“occhan(おっちゃん)”はあくまで「人」というイメージのモチーフです。ちょっと気まぐれな彼らには、遊び心と深い意味が含まれています。
誰もが経験していたり、忘れてしまっていたりすることについて目を向けています。様々な経験を経て、生きている確かさ、生かされている環境を考え自分や取り巻く存在の関係を想うことが強くなりました。以降、それらをテーマに制作を続けています。
何かに似せ、例えているわけではなく、受け手に差し出すような形でその人の感覚や経験に引き寄せてもらえたらと期待しています。

アーティストページはこちら


堀川 由梨佳 個展
people ≒ 〇〇
2022年4月9日[土] – 2022年4月24日[日]
(最終日16:00まで)

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